Sweet Rain

日々のあれこれ、たまに詩

MEMORIES 4  (札幌 1970)

    Ⅰ

風が

風を飲み

虹がこわれた

 

焼けつくような雨が降り

星が砕けた

 

長い長い葬列のあと

臆病なうさぎは走りさり

砂ぼこりの中で

あるいは

むし暑い森の中で

わたしたちはなにもせずに

たたずんでいた

 

ぬかるんだ道を歩いて

さまざまな別れをくりかえした

ひまわりは北を向き

世界はどこまでも不機嫌だった

 

    Ⅱ

川ぞいの喫茶店には

肺を病んだマスターがいて

暗いジャズをかけていた

 

やわらかなぬくもりを捜して

親をなくした子犬のように

わたしたちはさまよっていた

 

(本当は行きたい場所などどこにもなかったんだ)

 

冷たい雨にうたれて

飲みなれない酒を飲み

ときおり道路に倒れこんで

死んだふりをした

 

(本当に行きたい場所などどこにもなかったんだ)

 

赤ちょうちんにてらされて

ちいさな肉塊が

ぽつんとひとつ

放りだされていた

 

 ◆高校の時、「イースト・コースト」というジャズ喫茶に入りびたっていた。行先の見えないなかで、ジャズの海に潜りこむことが心地よかった。卒業して、「イースト・コースト」が閉店したと風の噂に聞いた。ひとつの時代が確実に終わろうとしていた。