Sweet Rain

日々のあれこれ、たまに詩

MEMORIES 3 (名寄 1977)

どこにもない場所に行きたかったのに

着いたのは零下三十度の

凍りついた街だった

 

夏は暑く

名寄川で魚を釣り

塩焼きにして

冷たいビールを流しこんだ

 

炉ばたという居酒屋には

実直なマスターと美しいママがいて

 

すべて四十年も前の話だ

毎日のように酒を飲み

草の臭いのする孤独をかんだ

 

もう四十年も前の話だ

むこうがわに渡った人もいて

私の声は届かない

 

 ◆最初に赴任したのが名寄だった。十二月の初めに駅に降りると、とてつもない寒さ   

 に襲われ、驚愕した。それから四年と数か月、寒暖差七十度ちかくある田舎の町で、

 酒ばかり飲んで暮らしていた。