Sweet Rain

日々のあれこれ、たまに詩

再生(Reborn) 3

もうあの頃に戻ることはない

水の城に行かなければならないから

 

季節をかさねて

目はかすみ

腰は折れ曲がり

甘い菓子を食べるのが

唯一の楽しみになった

 

どれだけ月日を越えてきたのだろう

疲れはてた老人は

一枚のハガキを握りしめた

 

「これが最後の旅です

 水の城におこし下さい」

 

体の奥の熾火が消えないうちに

出発しなければならない

 

水の城ははるかかなたにある

悪夢の荒野を横切り

風葬の丘を通りすぎ

幻しの死者と向きあう

生きるということは

おびただしい死を通過することなのだ

 

やがて

かぐわしい香りが流れてきて

私の目的地はすぐそこにあらわれる