Sweet Rain

日々のあれこれ、たまに詩

航海日誌 9 (小倉・博多)

どしゃぶりの雨はきらいだ

ぬれそぼつ長崎の静謐から

やっとたどりついた小さな競馬場

意識の中もぬかるんで

なしくずしの負けを重ねてゆく

 

完璧な敗北のあと

濡れた芝はどうしてこんなに美しいのだろう

小倉の一日は終わったが

人生はここで終わるわけじゃない

 

博多に帰ると

そこはしめ込みの男たちの祭りだった

暑い夏が戻ってきて

ぼくたちはうまい鳥鍋をつついた

 

(ママ お酒はもういいよ)

那珂川の川面をわたる風で酔いをさまし

わいざつな都市にまぎれ

 

今日一日の負けは負け

山笠の熱気のなかで

ぼくたちはこりもせず

次の旅立ちをくわだてはじめたのだ

 

  ◆これも「航海日誌」の最後の一篇。この時、最初に滞在していた長崎は大雨にみまわれ、列車が動かず、タクシーでようやく福岡にたどりついたのだった。翌日からは嘘のように晴れあがって、大宰府などあちこちを見て回り、最終的に充実した旅となった。特に食べ物がおいしかったなあ。