どしゃぶりの雨はきらいだ
ぬれそぼつ長崎の静謐から
やっとたどりついた小さな競馬場
意識の中もぬかるんで
なしくずしの負けを重ねてゆく
完璧な敗北のあと
濡れた芝はどうしてこんなに美しいのだろう
小倉の一日は終わったが
人生はここで終わるわけじゃない
博多に帰ると
そこはしめ込みの男たちの祭りだった
暑い夏が戻ってきて
ぼくたちはうまい鳥鍋をつついた
(ママ お酒はもういいよ)
那珂川の川面をわたる風で酔いをさまし
わいざつな都市にまぎれ
今日一日の負けは負け
山笠の熱気のなかで
ぼくたちはこりもせず
次の旅立ちをくわだてはじめたのだ
◆これも「航海日誌」の最後の一篇。この時、最初に滞在していた長崎は大雨にみまわれ、列車が動かず、タクシーでようやく福岡にたどりついたのだった。翌日からは嘘のように晴れあがって、大宰府などあちこちを見て回り、最終的に充実した旅となった。特に食べ物がおいしかったなあ。