Sweet Rain

日々のあれこれ、たまに詩

MEMORIES 5 (奥尻 1985) 

奥尻に着いた日は

まだ風もおだやかで

島はわたしたちを

あたたかくむかえてくれたようだった

 

人気のない

夏の終わりの海岸を巡り

夜は民宿村田で

新鮮ないか刺しと

うにでだしをとったぜいたくな浜鍋を

満喫した

 

翌日 台風襲来

フェリーは欠航し

車の中では

中村あゆみが何度も

 翼の折れたエンジェル

 みんな翔べないエンジェル

と歌っていた

 

その日は港近くの安いホテルにとまり

運転してくれたM君と

人生 こんなこともあるよね と

ぬるい日本酒を酌みかわした

 

翌朝は嘘のように晴れわたり

フェリーは定刻に出港した

耳の奥では

翼の折れたエンジェル」が

ずっと流れていて

 

形のさだまらない

水のような思いを抱いて

わたしの三十三才は

このように始まったのだ

 

  🔷8月の末に、奥尻でうまいものを食べようと、ちょうど誕生日の翌日から一泊二 

   日の予定で島を訪れた。車でなべつる岩などの観光スポットを回り、満足したと 

   ころで台風直撃。中村あゆみの「翼の折れたエンジェル」はいまだに体に染みつ  

   いたままだ。