著者が10年以上前に、イギリスで、彼女のいう底辺託児所で働いていた時のドキュメントをベースにした著作なのだが、これが半端なくミラクルなのだ。
登場する幼児たちがちょっと今の日本では想像もつかないほど個性的で、本当にこんなことがおこっているのだろうか、と思ってしまうのだが、これが意外と素敵なのだ。(実際は、現場にいるものは大変だろうけど)
あの大英帝国の現在が、多民族国家になり、LGBTQも普通になって、こんなにカオス状態になっているとは。それでも、最底辺で生きていく人々は死なずに生きていかなければならないのだ。
ただ、救いもある。詳しくは本書を読んでもらうしかないが、たとえば、自分に対して意味なく暴力をふるう2歳児のリアーナを、なにもなかったようにハグする2歳児のアレックスの話。人間の原初的な関係性がここにあるのだと思う。人間は意外と信じていいのだと。
がんになって、抗がん剤の副作用で苦しむ連れ合いの言葉もいい。
Life is a piece of shit after all.
人生はくそである。まあ、そうだけれども、それでも生きていくことは面白いのだ。
最後にちょっと泣きそうなエピソードをひとつ。
貧しい家庭のアリスが底辺託児所を去るときに、著者とお互いにうまくお別れができず、最後に著者に言った一言。
I'll miss you.
(淋しいよ・・)
子供にはかなわないね。
しかし、ブレイディみかこはどこまでもパンクなのだろう。すごいね。
一昨日、サマーソニックのマネスキン(イタリアのバンド)の映像を見て、思ったのだが、ロックするということは闘うということなのだ。今の日本のバンドは本当に大事な部分が欠けているよね。蛇足だけど。