一昨日は神田日勝「大地への筆触 ここで描く、ここで生きる」を見に、道立近代美術館へ。コロナのせいもあって、近代美術館へは、ほとんど一年ぶりの来訪である。
平日のせいか、ほとんど混んでいない状態である。コロナ対策で、連絡先を記入した紙を箱に投函して、会場内へ。
吉田傑の段ボールの馬が出迎えてくれた。
日勝の有名な半分だけ描かれた未完の「馬」をモチーフにした作品である。毛のはげたところもちゃんと表現してある。
日勝が32歳で死んだ1970年は、ちょうど私たちが高校で暴れていた年で、その近辺の作品にはなんとなく同時代性を感じずにはいられなかった。ポップアートぽい作品の女性には、たとえば、つげ義春の「ゲンセンカン主人」のエロスを感じたりして。
日勝は10歳以上年上だが、おそらく、同じ文化の匂いを嗅いでいたのだろう。
ただ、その前に描かれた飯場とか馬の存在感は、頭でっかちの若造には想像を絶する世界で、60代後半にさしかかった現在の私たちが、ようやく了解できる風景なのだ。
モデルになったNHKの朝ドラ「なつぞら」の天陽君は、ちょっときれいすぎたが、ベニヤ版に描かれた日勝の絵は、生活臭がむんむんとしていて、こちらににおってきそうだ。そういえば、私の子供時代はこんなふうに、いろいろな匂いに囲まれていたっけ。
そんな中で、描かれた馬の目がどこまでも哀愁をおびていて美しい。ひとすじの救いである。
久しぶりに充実した時を過ごせて幸せだった。道立近代美術館さん、またよい企画をお願いします。