Sweet Rain

日々のあれこれ、たまに詩

ブレイディみかこ「ワイルドサイドをほっつき歩け」を読む

しかし、どこの国でもベビーブーマー世代(1946~1964)は生きずらくなっているらしい。陽気で楽天的なイギリス人も例外ではない。私は日本でいえば全共闘世代のちょっと下(1952年生まれ)なので、ブレディみかこが活写する世代のおっさん、おばさんの元気な時の様子がよくわかる。まあ、嫌いなことはやらなくても、生きてゆけるよね、というのがその当時の生き方だった。余裕のある良い時代だったのだ。

それなりにつらいこともあったけど、なんとかなったしね。

酒の飲み方なども、泥酔していろんなことをやらかしてしまっていた自分を思い出して、やっぱり昔は(自分の若いときは)とすごいなあとなつかしんでしまった。しかし、今考えると、死んでも不思議がないことが何回かあったなあ。

などと、昔を懐かしんでいるうちに、おっさんたちはたいへんな時代にやってきたようだ。いつのまにか、病を抱えたり、家族が崩壊したり、失業したり、自分の思い通りに行かない状況が普通になってきたからだ。

しかし、ここにきても、おっさんたちは下の世代に媚びることはしないのだろう。なんとか、自分でこの状況を切り開こうとする。意地になって。

特にイギリスはブレグジットで、国のあり方が大きく変わったので、日本の数倍は大変な状況だろう。それでも、おっさんはがんばり続ける。いや、すごいけど大丈夫か?

ブレイディみかこのおっさんたちへの愛はすばらしい。ただ、おっさんたち(私を含めて)は、下の世代にとっては鼻持ちならない存在に他ならない。早く退場してくれればいいのに、と思われている世代なのだ。

この本はコロナ以前のおっさんたちを描いている。彼らは今、コロナ禍の中でどうしているのか。ぜひ知りたい。おっさんたちは弱った体を𠮟咤しながら、新しい時代を歩いているはずだが。

しかし、ブレイディみかこのパワーは半端ではない。自宅の菜園にこもっている自分にも大きな刺激をくれた一冊でした。