春がきて
砂糖菓子のほのかな甘さが
郷愁を
はこんでくる
幾度となく水面をたたき
なつかしい記憶を
ふるいたたせる
川縁に
わずかにかげろうがたち
昔 愛した人と訣別する
まだ 生きていかねばならないらしいから
あたたかい日ざしに身をゆだね
さびついた言葉を捜す
(まるで
年老いて
やせほそった
オオカミのようだね)
気がつくと
川の中で
あれほどあざやかだった光が
見えなくなった
ゆっくりと歩いてゆけばいいのだ
ここちよいうたたねのあとで
時間の流れが反転するまで